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俳優インタビュー VOL.3

(2017年9月収録)

トンチャイ・ピマーパンシー 

Q:リハーサルに参加してみてどうだった?

今回のプロジェクトは初めて参加するタイプの芝居で、新鮮で楽しい。キスやセックスを舞台上で表現する時、タイでは、それが見せかけだと誰でも分かるような手法を取るけれど、今回の演出ではリアリティを感じる。同時に、原作の小説には露骨な性描写が多く、それをそのまま上演すれば、観客はまるでアダルトビデオでも見ているのかという気分になってしまうかもしれないが、岡田さんの演出であれば、セックスにも違った意味が含まれているということが示唆されるし、単なる猥褻さとは感じないと思う。

Q: 自身でも創作活動をしていますか?

共演者のタナポン・アッカワンユー(Thanaphon Accawatanyu)と最近一緒に作品を創りました。ですが、自分だけで作品を創ったことはまだなく、普段はほぼ俳優のみの活動です。

Q: 俳優や演出家として活動する上での方向性を聞かせてくれる?

最初の頃に目指していた作品は、社会的な問題を学べたり、観客に問いを投げかけたりするをた作品だったけれど、最近では、より自分に誠実に、自分が実際に感じていることを表現するような作品を作りたいと思っています。その点では、セリフがある演劇作品よりも、身体だけで表現するフィジカルシアターの方に興味を持っています。

Q: これまで最も影響を受けた演劇作家は?

B-floor Theatreの作品、特に共同芸術監督のTeerawat Mulvilaiさんと女優のDujdao Vadhanapakornさんから影響を受けました。12個の赤いタンクを使ったTeerawatさん本人のソロ・パフォーマンス『Red Tank』では、Teerawatさんが転がってくる赤いタンクの上を走ってよけるシーンが非常に印象的な作品でした。Dujdaoさんの作品は、ただ目の前のできごとを認知するだけでなく、まるで自分も本当にその人と同じ体験をしたような感覚になります。演劇をただ見る・聞くということだけにとどまらず、観客と俳優が体験を共にするという形式の作品に魅力を感じます。

 

タップアナン・タナードゥンヤワット 

Q: 今回10日間のリハーサルが終わったけど、あなたにとって印象的だったことをおしえて。

今日私がカオシン(Khao Sing)というキャラクターを演じているあるシーンの時に岡田さんが言ったのは、演じる側がカオシンの役を演じるだけでなく観客もカオシンになってもらわないといけない、観客にも自分はカオシンなんだと感じさせないといけないということ。私はそういう演出の仕方を今まで受けたとことがありませんでした。一人称として役を演じやり、あるいは三人称としての存在でいて、ただ観客に物語を追わせたり、その人物に興味を持たせるのではなく、その人物にさせてしまうということにとても興味深く感じました。

Q: あなたは俳優として以外にも自分で創作活動もしていますか?

はい、大学卒業後に2つの作品を作りました。そのうちの一つは、チュラーロンコーン大学文学部(Chulalongkorn University文学部)の先生、ソッサイ先生の名を冠した「ソッサイ賞」で、最優秀俳優賞と最優秀プレゼンテーション賞を受賞しています。もう一つはは、Bankok Theater Festivalで作品を発表しました。演出、脚本も手がけて、以前はテレビドラマの脚本も書いていましたが、俳優の仕事のほうが好きなので、今は俳優活動だけに集中したいと思っています。

Q:どういった方向性で今後の俳優活動を展開したい?

まずは、俳優の仕事だけで生活を支えられるまでに自立したいと思っています。最近は結構忙しくなってきていますが、演劇専攻を卒業してもそこまでルックスが良くもない俳優が、コネも使わず自分の実力だけでやっていくということはとても難しいです。今の目標は自分の実力でやっていくための俳優としてのキャリアパスを作っていくことですね。

俳優の仕事だけでなく、自分で作品を作って、そこに実力ある後輩の俳優/女優を起用することで、彼らを国内外の様々な人たちに紹介する、というような方向性も考えています。

これからもっと商業的な仕事もやっていきたいけれど、同時にこれまでやってきたような面白い仕事も継続してやりたいですね。

Q: 今回の小説を読んでどう思った?

登場人物のすべてが非常に興味深いと思います。特に主人公のカオシンは一般的な人に好かれるヒーローのようなキャラクターではなく、わがままなところもある。自分が辿ってきた人生もカオシンのものに近いし、多くの点で自分と似すぎていると感じたから、カオシンがかわいいとは思えないんです。「ああ!カオシンがまたやらかしたよ!」という感じで読んでいました。

Q: カオシンとあなたは、どういう点が似ている?

自分のアーティストとしての辿ってきたキャリアパスが似ています。卒業制作の時、僕は大学の教えの通りにやらず、それでも卒業しました。自分の力を信じて、卒業後も自分で作品を作ってきました。それでも、結局、経済的な理由に負けて生活の糧のために脚本を書く仕事をしました。その仕事が苦しくて、そんなどん底の人生を解決させる方法にセックスを選びました。カオシンは自分がアーティストであることを口実に、自分勝手な人生を送ってきたというのも自分と全く同じ。でも、それが悪いと言っているのではありません。これはただすでに起きた出来事であり、これからどうなるかだと思います。自分は100%カオシンと同じ考え方を持っているわけではありません。だけど、人の苦しみの本質的な原因は同じなんだろうと思います。

ケーマチャット・スームスックチャルーンチャイ 

Q: 6日目の稽古が終わった印象は?

この小説は自分の意見をスマートに潔く語っていて、考え方も深く、いい作品だと思います。

それから、岡田さんがこの小説の深みを演劇化しようとしているプロセスがとても興味深いです。例えば、第1章の冒頭である俳優が寝ている時に別の俳優がナレーターとして語る場面。ナレーションの語りによって観客の頭の中に、ステージで何が起こっているかという像が立ち上がるけど、イメージが明確に形を結ぶんです。岡田さんの、観客の想像力を最大に生かそうとする演出方法がとても面白いですね。ステージに多くのセットを置くと観客の想像をコントロールすることができるけれど、逆に岡田さんはセットを減らすことで想像を誘発しようとしています。

Q: 岡田作品のような演出方法はあまりタイでは見られない?

同じようなアイディアを持つ人は多いと思うけれど、これまで観客として作品を見ているだけでは”想像”が持つ力を強く意識して作っているように思える作品はなかったですね。

このプロジェクトに参加して、岡田さんの説明を聞きながら間近でクリエーションのプロセスを知ることで、想像の重要性がよくわかりました。

例えば、池の横にマーブル柄のテーブルが置いてある、という場面設定の時、他の作品はそれを言葉で説明するんですけど、岡田さんはその像を実際に観客の頭の中に結ぼうと工夫しているんです。

Q: あなたはチュラロンコーン大学工学部(Chulalongkorn University工学部)卒業後、Democrazy Theatre Studioで俳優や照明家として活動しているけれど、工学の世界から演劇に飛び込んだきっかけは?

大学生時代にバンドをやっていて、そこで知り合った芸術学部の先輩に誘われて演劇に参加したのが最初の出会いでした。大学4年生の時には照明の勉強をしていたし、大学時代に演劇業界の知り合いがたくさん出来たから、その流れで卒業後も演劇関係の仕事の誘いをもらうことができました。そうした中でも特にDemocrazyは他に比べて社会的な問題を発表する作品が多かったので、サラリーマンになって安定した生活を送るよりも、意義ある作品を生み出していく人生のほうが自分にとって価値があると思い、Democrazyに入りました。

Q: この作品を発表することでどんな影響をタイ社会に与えたい?

この作品は、タイ社会に暮らす一部の人の声がまとまった作品だと思います。まずはそれをたくさんの人に届けたいです。そのためにも、多くの観客にこの作品を見てもらい、この声を理解してもらいたいと思っています。

ウェーウィリー・イッティアナンクン 

Q: プロジェクトの構想や全体のスケジュールを聞いた印象は?

どこまでこのプロジェクトについていけるか少し不安だけど、とても楽しみにしています。

Q: 普段自身で創作活動はしている?

女優だけで創作はしていません。

Q: 『プラータナー:憑依のポートレート』(“Pratthana – A Portrait of Possession”)に出演もしているThanaphon Accawatanyuの作品に参加中だけど(2017年9月時点)、この作品で面白いと感じているところは?

まず脚本・共同演出を務めているThanaphon自体が面白いです(演出は『プラータナー:憑依のポートレート』出演俳優でもあるThongchai Pimapunsriとの共同演出)。彼のプロダクションに参加するのは初めてだけど、彼の演出は他の演出家と全く違っていて新鮮だし、なにより彼は全く独自のビジョンを持っていると思います。観客がこの作品をどのように感じ取るか自分には分からないけどそこが面白いところじゃないかな。

Q: どのような関心を持って女優になったの?

最初から女優になろうと考えていませんでしたが、チュラロンコーン大学文学部演劇学科で演劇を学び、学内の作品に出演したり、学外の仕事やワークショップに参加するうちに、楽しくて続けたいと思うようになっていました。

Q: 参加する作品を選ぶポイントは?

作品を選ぶというよりも、おもしろそうだと感じたプロジェクトがあればオーディションに参加するし、相手から紹介されることもあります。 オファーが来た場合、私はいろんなことを試すことが好きなので自分から断ることがほとんどないです。

Q: 原作小説の感想は?

ストーリーが重く、物語の進行も複雑で一気に読めるような小説ではないですね。でも、そこが面白いと思うし、気に入りました。

登場人物が取る行動のほとんどは共感出来ませんが、ある部分では共感できる部分もあり、それがとても心に響きました。第4章までは続けて一気に読み進めることができたのですが、最後の章を読む時になってしばらく間を置いてしまいました。なんだか、その体験も不思議だったと思っています。

Q: 最も印象的なシーンは?

2010年の人が死んでいくシーンです。それは、自身も実際に体験した出来事だから。

事件が起きた2010年は、自分も成長して色々と周囲の物事が理解できるようになっていたので、余計に強い印象を持っています。