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俳優インタビュー VOL.2

(2017年9月収録)

 

クワンケーオ・コンニサイ 

Q: 歌手であるあなたがこのプロジェクトに参加したきっかけは?

今の主な収入源は歌手としての仕事で、月曜から金曜まで、毎日歌を歌っています。だけど、元々私はバンコク大学演劇学部(Bangkok University 演劇学部)を卒業後、海外留学をしてミュージカルシアターを学んでいたので、学生時代からたくさんの舞台にも出演し、卒業した後も様々なプロダクションに参加してきました。今も歌の仕事を続けながら、女優としてオーディションに応募したり、声がかかったプロダクションにはほとんど参加しています。今でも女優の仕事に誇りを持っているので、職業を聞かれれば女優と答えます。
このオーディションのことはニュースで知ったのですが、海外でも上演される国際的な協働プロジェクトは、自分にとって大きなチャレンジになるいい機会だと思って参加を決めました。

Q:原作小説で印象的な場面はどこですか?

政治と美術に「性」という要素が加わり、その一見交わらない3つがうまく融合して1つの作品になっている点にとても関心しました。ですが、性的な描写が本当に多いので、第1章からいきなり衝撃を受けました。この作品の極めて重要な点だと思っていますが、物語が進むにつれ性的な描写がますます濃くなっていくので、読むのに体力が必要だったし、正直なところ、自分が演じることを考えた時ここまでしなければいけないのか、という不安も同時に感じました。実のところ、5、6章は特に性描写が激しすぎてしっかり読めていないんです。

ウィットウィシット・ヒランウォンクン 

Q: どのような関心を持って本プロジェクトに参加した?

2013年に舞台のお仕事をするようになってから、毎年少なくとも1本は舞台に出演しているのですが、出演するだけでなく音響制作も担当したりして、どんどん舞台の仕事に興味を持つようになりました。この作品は、海外との共同制作で、私自身がウティット(Uthis)さんのファンでもあるので、ウティットさんと日本の演出家の共同プロジェクトなんて絶対面白いものになるだろうと思って、どうしても参加したかったんです。

Q: ウティット作品の魅力は?

元々はアーティストから出発しているウティットさんの小説は、使われている言葉がすごく綺麗で、豊かなディティールを含んだ、とても映画的な作品だと思います。また、小説家出身ではない自分が小説を書いていた頃のことも思い出して、彼は先生のような存在です。

Q: 原作小説の印象は?

人の形と、国や街など様々な物の「形」が重なり合っている。そして内と外というコンセプトも面白いですよね。この小説は、ウティットさんが裸になったような、極めてプライベートなものだと思う。どれくらいが実体験なのかは分からないけれど、すごく情熱的な部分が私は好きです。

Q: いま言及した、様々な形の対比を強く感じさせる印象的なエピソードを教えてもらえる?

この作品では、登場人物同士の掛け合いが、その時々の政治的な変化と関連しているんです。例えば、シラパコーン大学(Silpakorn University)の、大学の中でも過半数である先輩に、少数派の新入生が従わざるを得ないシーンは、タイ国内で少数派が多数派に蔑ろにされている構図と似ています。シン・ピーラシー(Silpa Bhirasri)先生の像へのいたずらから発展した事件は、自身が心酔するものを批判する相手に危害を加える、という現実社会でも実際に起こっている出来事に重ねられます。小説を読んで思ったのは、誰かと接することで、自分のアイデンティティに新たな部分が生まれる、ということ。そして、政治的な出来事も、今までに起こった政治的な出来事の記憶により形成されて、そこには何かからの繋がりがあるっていうことがわかりました。

Q: なぜ舞台の仕事に興味が湧いたの?

音楽家として活動していた時、自分の容姿を好きなファンばかりで、音楽自体のファンが少なく、音楽家として自分が伝えたいことが何も届いていないのでは、と不満を持っていました。しかし、舞台に出演する時は、観客はお金と時間をかけて見に来てくれるので、自分が伝えたいことを100%伝えられますし、自分が見られたいように見てもらえるので、誠実にやりたいことをやっていれば、誰かが自分の伝えたいことを分かってくれると思ってます。

ササピン・シリワーニット 

Q: リハーサルが始まって6日目、今日は1章から6章まで初めて作品全体のリハーサルが行われたけれど、ここまでの印象は?

スケールの大きなプロジェクトなので、とにかく毎日が発見の連続!出番はそんなに多くないけれど、他の出演者と共に時間を過ごすことで、日に日に1つのチームという感覚が強まってきているような気がする。

Q: 小説を読んだ時と、稽古をしている現在とで作品に対する印象は変化した?

初めてこの小説を読んだ時は、とても個人的な小説だと感じたし、私自身もこの小説を読むのはプライベートな空間で、集中しとないとできなかった。その時はこの作品を演劇化してどうなるかが想像できなかったけれど、様々なシーンをピックアップしながら稽古を重ねる中で、新しい視点や感覚を感じている。

Q: 小説の中で印象的なシーンや、共感できなかった点はあった?

男性視点の性描写は、性行為中の男性の脳内を覗いているような感覚になるから面白い。それと、自分とウティット(Uthis)さんの意見が結構一致しているので、作中の政治的な意見や社会的な事象にはとても共感した。単に作者が自身の政治観を押し付けるという作品ではなく、同時に他の視点にも気づかされるような作品なので、読んでいて色々と質問をされているような感覚がした。性と政治という異なる側面が絡み合う作品で素晴らしいと思うし、性的な興奮と政治的な興奮が似ていることなどは、自分では気付かなかった視点なので、面白かった。

Q: ササピンさんの今後の方向性は?

演劇のプロデューサーとしては、タイ演劇シーンを他の国の演劇シーンと繋げたいと考えています。タイの演劇作品は他の国の作品と比べても遜色ないクオリティだと思っているので、もっと海外に紹介していきたい。
B-Floor Theatreで海外とのコラボレーション作品を行う時は、大体自分がプロデューサーと窓口を担当していて、過去には自分が企画してコラボレーションを実現させたこともあるし、相手から声をかけてもらって作品上演に結びつくことも。将来の展望としては、暴力に関する作品を3カ国からバンコクに招聘して、上演するフェスティバルを開催したいと考えています。2019年末の開催を目指しているんだけど、このプロジェクトとのスケジュールを調整しないといけないな、と思っています。

Q: このプロジェクトに期待していることは?

期待よりも今は楽しみの方が大きい。海外ツアーは初めてで、自分の夢が実現する感覚。
これまで参加してきたのは短期的なプロジェクトがほとんどなので、長期的なプロジェクトに参加できてとても嬉しい。

タナポン・アッカワタンユー 

Q: 自身の劇団でも現在作品を上演中なんですか?

今回の作品では脚本と演出を担当しました。出演はしていません。『プラータナー:憑依のポートレート」(“Pratthana – A Portrait of Possession”)では俳優をやっていますが、ぼく自身は自分の劇団で俳優を務めることはほとんどありません。今回の作品は別々の時代を生きる三人の少年にまつわる物語です。タイで有名な人物チット・プミサックの来歴に基づいた史実と、アニメ「機動戦士ガンダム」(Mobile Suit Gundam)や日本のボードゲームから着想を得て、三人の少年がルールを侵そうとする様子を描いています。

Q: これまでの演劇的な、もしくはアーティストとしてのバックグラウンドを教えてください。

ターマサート大学マス・コミュニケーション学部(Thammasat University マス・コミュニケーション学部)では映画を専攻していました。
大学時代に演劇サークルに入ったことがきっかけで、演劇へ傾倒していきました。サークルを通じて、大学外のアーティストとも知り合い刺激を受けたことで、卒業後も演劇を続ける気持ちが固まって、スプラッシングシアターを旗揚げしたんです。現在は劇団として6本目の作品を上演しているところです。

Q: 原作小説を読んでどこが印象的だった?

第5章の終わりに、それまでとフォントが変化している部分が印象的でした。中でも、カオシン(Khao Sing)の命令に従って、ワーリー(Waree)がビデオ通話で自慰行為を見せるシーンは、僕たちも経験したことのある政治状況になぞえられている気がしました。セックスと政治が入り乱れるこのシーンがもし映画だったら、モンタージュのようにシーンが切り替わる画が頭に浮かびましたね。クライマックスの場面では僕の呼吸も早くなり、疲れと解放感のある読後が新鮮な体験でした。