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俳優インタビュー VOL.1

(2017年9月収録)

ジャールナン・パンタチャート 

 

Q: プロジェクトの構想や全体像を聞いてどう思った?

長期的な計画も立っているプロジェクトで、すごく興味深いと思いました。また、タイの歴史に関することが多く書かれている小説が日本の演出家である岡田利規さんの目に止まっていること、そしてその中で彼が選ぶ題材についても興味深く思っています。普遍的で人間的な題材も潜んでいるように感じています。

Q: 原作小説の中で印象に残っている点を教えてください。

原作第2章で描かれているギャラリーについてのエピソードは、私が大学を卒業してそのギャラリーに就職した時と同じ頃に起こっていて、そのギャラリストを私は実際に知っています。そのため、作中に自分が見えて、当時の雰囲気や匂いが立ち込めるようなノスタルジーを感じました。わたしはウティット(・ヘーマムーン)と同世代で、大学を卒業したばかりの時、シラパコーン大学でパフォーマンスをした時に、当時シラパコーン大学のキュレーターをしていたウティットに知り合ったのです。また、第1章で描かれている1992年5月の事件当時、自分は高校生でした。地方に住んでいたため、ニュースで流れる映像を見て、銃撃戦があったことを知りました。私が好きだった大学生の先輩もデモに参加して行方不明になり、2ヶ月後見つかりましたが、そのまま大学を辞めました。

Q: 作品を通じて感じたメッセージは?

作家の怒りと、心が引き裂かれるような悲しみを感じました。また、罪悪感と後ろめたい喜びも見えました。例えば、変な体勢での自慰行為を達成できた時の喜びなど。作中では、物語が進むにつれ性行為の意味が変化しています。そして、2010年頃のセックスは最悪なものに感じ、それはもはや快楽の為ではなく、強姦のようにも思いました。

Q: 自身で創作しているのはどんな作品?

私が演出を始めたのは2008〜2009年頃で、上演のたびに作品の形態を変えていますが、観客の反応によって俳優自身の演技が変化する、という話を耳にして、一貫して観客とのインタラクティブな要素を持った作品を作っています。最初に作った作品は、唐辛子や砂糖など様々な調味料・食材を観客に渡して、その観客が面白いと思ったら持っている食材をスープに入れ、最後にそれをみんなで食べる、というもの。上演する回によって味が変わります。
現在取り組んでいるのは(※インタビュー収録の2017年9月当時)、以前の作品のリバイバル。劇場を国家に見立て、パフォーマンスの中で国の将来を観客に決めてもらう作品です。

 

パーウィニー・サマッカブット 

Q: 10日間のリハーサルに参加してどうだった?

演出家の岡田さんが自身の脳内で考えていることを実現するためのある種の実験だったと思う。岡田さんがこの実験で受けたインスピレーションをどのように消化するのか、その結果、台本が小説通りになるのか、はたまたオリジナルなものになるのかをとても知りたいです。性的な欲望と政治という2つのテーマが混ざり合う本作が、演出家にはどう見えているのか気になります。

Q: 小説を読んでどう思った?

セックスと人間関係が重なり合うところがおもしろいと思いました。また、これらのことを通して政治的な視点をも示唆しているように感じます。登場人物たちは、政治的なことについて話しているわけではありませんが、彼らの力関係は、人と人との間にある力についてを示唆しています。例えば、登場人物のナームとカオシンについて。カオシンは、階級の異なる相手をコントロールすることで自分の存在感を高めようとします。また、ラックチャオは、人生のある時期に誰かと一緒になることを選ぶ女性の生き方を表していて、それは、充実してるように見えるし、なにか力強いものを求めているような気もします。

Q: Democrazy Theatre(Aeは共同創設者)という組織・集団のコンセプトについて教えてください

Demozrazy Theatre設立当初、タイにおいてパフォーミングアーツを見るのは特別な機会、という認識が一般的だったので、私たちは、パフォーミングアーツを、日常的にアクセスできるものに変えたいと考えていました。3、4年活動を続け、それがある程度実現できてから、今度は、作品のクオリティを向上させるために、いまの時代における作品創りやプロデュースのあり方の限界を超える試みをしてきました。そして、今、私たちと同じ課題を持ちながら活動している「集団」が多くあります。それは、自分たちの活動をどう持続するか、またフルタイムアーティストを生み出すにはどうすれば良いかということ。これらの課題が、タイの舞台芸術やアーティスト育成の発展の遅れの原因になっていると考えています。そのためには、アウトプットではなく創作のプロセスも重要です。クリエーションに十分時間が取れなければ良い作品を生み出せないし、人も育たない。時間をどう確保するかが目下の優先課題です。

ティーラワット・ムンウィライ 

Q: プロジェクトの構想や全体像を聞いてどう思った?

とても壮大なプロジェクトですよね。タイのコンテンポラリー作品で海外上演されるものは、フィジカルシアターやダンスなどセリフの無いものがほとんどなので、タイの歴史・社会の記録でもあるこのような作品が海外で上演されるのがとても嬉しいです。

また、海外の人たちにもここ15年のタイの全体像が見えるのではないでしょうか。ウティット(・ヘーマムーン)も「出口がない」と言っているこのようなタイの現状を、本作を通じて世界の人々へ伝えられる、大きな意味のある作品になると期待しています

Q: B-floor Theatreでティーラワットさん自身が演出を務める作品は、どんな作風でしょう?

2010年5月に99人の赤シャツ派が殺害された事件を受け、3部作を作りました。第1作目の『Flu-O-Less-Sense』は、タイの街中で定期的に大規模に行われる大掃除イベント「ビッグ・クリーニング・デイ」に関する作品。Democrazy Theatre Studioで2010年6月に上演しました。続く第2作は『Fool Alright』という作品で、2011年に上演しました。赤シャツ派への暴力が発生した原因をタイの内部で探るという内容です。そして、第3作の『Oxygen』 は出口のないタイの現状を描くもので、2012年に上演しています。

また、タイ、ラオス、ミャンマー、インドネシア、日本で芸術と検閲の関係について調査して新しく作った作品が2つあります。それが、普通の人間がどうやって加害者になるかを探った『Ice Bark』という作品と、突然行方不明になった人が政府・警察により殺害・遺体隠蔽され、その遺体が赤いタンクに入れられていた実際の出来事を題材にした『Red Tank』という作品です。

Q: 本作をどんな観客に届けたい?

バンコクに住んでいる一般の人々に見てもらいたいです。ヨーロッパでもタイの政治状況について興味を持っている人が多くいると思うので、本作を見ることで現在のタイについて理解していただく手助けになるのではないかと思っています。